2006/02/10
◆2006年2月7日にトータルゲーム製造業版(TG-E)を実施しました。今回の参加者は、3名。財産法に即しゲームの結果を記録したところ、300円の自己資本から全員がスタートし、10期終了までに、A君は自己資本が4円、B君は510円、私鵜飼は623円という結果になりました。
◆以下では、参加者全員が、ゲームを振返った内容を紹介します。全員で情報を共有し、分からないところや深く追究したいところをディスカッションしながら進みましたので、約2時間かかりました。振返りの手順に沿い、出された気づきの言葉をそのまま列挙してありますので、分かり辛いかもしれません。その一方で、生の声であるがゆえに、ゲームを通じどのようなことを考えたかが素直に出ていると思います。
使用教材:トータルゲーム(製造業版)
参加者:3名(A君、B君、鵜飼)
場所:愛知学院大学経営管理研究所
所要時間:(ゲーム)4時間30分、(振返り)2時間
1.自己資本の増減(スタート300円、10期)
・A君>300円→4円(経験回数:実質的に初めて)
・B君>300円→510円(経験回数:約30期)
・鵜飼>300円→623円(経験回数:約200期)
2.振返りセッション
(1)参加者がゲームを通じて気づいたこと(ラベル読み上げ順)
<原材料・仕掛品・製品の系>
・営業所にコマがなくならないようにする。
・補欠販売をできる状態にしておく。
・常に仕掛品・製品にストックがある状態にしないと1手~2手分遅くなる。
・販売を実施する2手前に、工場へ材料を入工する。
<情報収集・情報分析の系>
・情報収集は大切だ。
・状況に応じて戦略を変える(戦略の選択肢を持つ)。
・最初は、周りの状態が良く見えていた。
・ボトルネックがどこかを見極める。
・周りの人の戦略を常に読まなくてはいけない。
・やはり10期やると自分と周りに「流れ」ができる。
・バランスを考える(コマと市場)。
・借り入れは、先の変化を予測する中で行う。
・借り入れ、装置売却のタイミングがずれると、ずるずる経営が傾く(悪化する)。
・柔軟な対応をしたことが良かった。
・相手(競合相手)の考えを読む。
<意思決定・経営判断の系>
・タイミングと運と決断力が重要だ。
・商品販売は、おこぼれ待ちではなく、自分から市場開拓して売っていく。
・売っておけばよかったという、販売機会ロスが目立った。
・広告のタイミングが良かった。
・不確実性を吸収できる付加価値をつける。
・安い(原材料)市場から仕入れすぎると、市場が回らなくなる。
・スループットを高める工夫をする。
・根底となる経営方針を変えず維持した。
・途中で経営のやり方が定まらなかった。
・利益が出ず自己資本が増加しなかったが、最初から最後まで利益追求をした。
・後手に回るのは、予測できていないからだ。
・自分の経営が追い込まれているのが事前に分からなかった。
・1期の終了時点で現金を人件費及び補修費を補うだけ保有していないと駄目であり、いきなり3人のスタッフを採用することに無理があった。
・爆発的に利益を出すなら、大型機械を購入するのが良い。
・製造から販売を一体として考え、販売に対し、余裕を持った生産能力を維持する。
・研究開発は期の最初に集中する。
・材料の購入は、(このゲームの場合)平均コストで考える。
・市場開拓のための投資を行う。(このゲームの場合、材料を買うことと同じ。材料購入を市場開拓と同じであると考えることができるかが鍵。)
・材料市場に材料がない場合、割高だが市場外から購入した。(オペレーションを安定させるため)
・人件費を抑えた運営を実施。(人事異動を有効活用)
・競争相手への思いやりも時には忘れない(市場に参加している仲間として)。
<その他>
・モノの資産は減価する。
・資産は現金だけではない。
・生産設備の売却をタイミングよく行うと、モノの資産の減価を回避できた。
・運も良かった(このゲームでは、状況変化の内容がプラスに働いた。)
(注)<>のサブタイトルは、事後的に仮につけたものであり、読み上げ時点ではこのタイトルに基づいて行ったわけではない。
(2)気づきラベルから重要意見の選択と鍵概念の抽出(個人ワーク、以下は鵜飼作業)
①第1グループ
・借り入れは、先の変化を予測する中で行う。
・相手(競合相手)の考えを読む。
●抽出文>仮説立案のための適切な情報の収集と分析が欠かせない。
◎概念の重要度>2
②第2グループ
・スループットを高める工夫をする。
・材料の購入は、(このゲームの場合)平均コストで考える。
●抽出文>粗利を基本に経営を組み立てる。
◎概念の重要度>3
③第3グループ
・製造から販売を一体として考え、販売に対し余裕を持った生産能力を維持する。
・不確実性を吸収できる付加価値をつける。
●抽出文>予期せぬことへの対応ための事前の余裕づくりが鍵。
◎概念の重要度>1
(3)背理法による対偶づくり(重要度1と2を活用)
<背理法:ある判断を否定し、それと矛盾をなす判断を真とすれば、それから不条理な結論が導き出されることを明らかにすることによって、原判断が真であることを示す証明法。帰謬(きびゆう)法。間接還元法。間接証明。出典:大辞泉>
①1は2である
「予期せぬことへの対応には事前の余裕づくりが鍵」ということは、
「仮説立案のための適切な情報の収集と分析が欠かせない」ということである。
②2は1である<逆>
「仮説立案のための適切な情報の収集と分析が欠かせない」ということは、
「予期せぬことへの対応のための事前の余裕づくりが鍵」ということである。
③2でないのは1でない<対偶>
「仮説立案のための適切な情報の収集と分析ができない」ということは、
「予期せぬことへの対応のための事前の余裕づくりができない」ということである。
(4)生活の中での問題
①深刻な問題>社会実験プロジェクトの推進母体が脆弱である
②次に深刻な問題>期限があるにもかかわらず直前にならないと本腰を入れない
(5)対策(4の問題の対策を3の対偶の考えで検討)
①支援者として、事前に参加者個々人と対話し、特徴を把握し、カルテを作成する。
②日頃から気づきメモを作成し、情報収集の傍ら、分析の予行練習をする。