アントレプレナーシップ・エデュケーター道場

お知らせ

2010/02/20

高校生のバーチャルカンパニー年間成果発表会に参加してきました!

愛知県から(特活)アントレプレナーシップ開発センターが主催するバーチャルカンパニー・プログラムに参加している学校は2校ある。1校は大学部門の私達、愛知学院大学(経営学部)、もう1校は高校部門の名城大学附属高等学校(総合学科)である。
約5年前に京都リサーチパークで行われたバーチャルカンパニー講習会で担当の平山先生とお会いして以後、交流させていただいている。特に、ここ1年は、バーチャルカンパニー開始直後、中間発表会そして京都大学でのバーチャルカンパニー・トレードフェアと3度にわたってお会いし、先生がバーチャルカンパニー・プログラムで何を行おうとしているのかを確認し、生徒の成長を見守る機会を得てきた。平山先生より、2月15日に年間成果発表会を開催するとの情報を頂き、光栄にも参加させていただく機会を得た。
さて、年間成果発表会のご案内を頂いた際、あわせて「(バーチャルカンパニーに参加し企業と商品を共同開発する)ビジネスⅠの授業を行っていることもあって、今年のクラスの生徒の中から、経営学部系の進学希望が増えているようです。」との情報を頂いていた。そこで、意識的に「商取引」のみに特化した実践と比較してバーチャルカンパニーの取り組みを経営学部流に考え、7つのグループ(注)の発表を聞いた後、次のように私の考えを述べさせていただいた。
(注)いずれの開発商品も、地産地消を目指したお菓子である。開発にあたっては、ホテルのパティスリーシェフや有機食材使用した料理を行うシェフと連携している。写真や絵コンテを見ているだけで、甘党の私は食べたくて仕方がなかった。
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◆全てのグループの商品が、一消費者としてみて、食べてみたいと思わせるものでした。もっと自信を持ってください。
◆自信を持って良い理由がもう一つあります。すごい事をやったんです。皆さんは、商いのみをしたのではなく、商うものを自ら考え作ったのです。あるいは、つくるプロセスに関わったのです。経営学部では、多様な種類の高校から学生を受け入れていますが、彼らが高校在学中に行ったと語る商業実践やビジネスプラン・コンテストへの参加等と比較し、本日この場にいる皆さんは「オリジナルなものを考案」し「つくり上げた」点で秀でています。実行する過程で、生きるもしくは働く「知恵」を得たに違いありません。
◆その一方で、成果報告を聞いていて残念な点もありました。皆さん「○(まる)」をイメージしてください。そして、その中に平行な2つの線を引き、3つの領域に分けてみてください。一番上が「機能」、中段が「シーン」、下段が「価値」と考えましょう。これは商品が兼ね備えているものです。機能とは、商品が消費者に提供する機能。シーンとは、商品が実際にいつ・どこで・どのように・誰に使われているかというイメージ。価値とは、利用した人が商品に実感する価値(有用性)。本日の報告のほとんどが、機能の説明に終始していました。シーンや価値を実感できませんでした。消費者の声も反映されているとはいえないものも多かったように思います。消費者は、提供される機能のみに魅力を感じるのではなく、使用シーンと使用した時にもたらされる自分にとっての価値(有用性)が実感できて、買い求めるのではないでしょうか?
◆そこで、是非、後輩に次の2つのことを伝え、実践するように促してみてください。
 まず、3つの○が重なるように描いてみてください。3つの○にはそれぞれ「やりたいこと」「できること」「社会的に求められていること」が入るとします。3つの輪の形状は、それぞれが重なり、真中で3つの輪が重なるようにできていると考えます。商品や事業は、3つの輪が重なったところで実現するのではないでしょうか。今日の成果報告を聞いて、「やりたいこと」は分かりました。「できること」は専門家から支援を得ることに成功しましたね。でも、「社会的に求められること」が見えません。この点に注意し、調べ、考えてみるように、後輩へアドバイスを送りましょう。
 次に、テスト・マーケティングをしましょう。これは、「できること」と「やりたいこと」を「社会的に求められること」と調和させるには欠かせないものです。より具体的に言えば、テスト・マーケティングは、最初に言った、商品の「機能」「シーン」「価値」が本当に的を射たものかどうかを確認して行く作業です。これは、自分たちで行った試食とは違います。想定する消費者の声を聞き、自分たちの考え方が適切かどうかを判断する作業です。そのためには、チラシ等の紙媒体での説明でもかまいません。重要なことは、自分たちが何をやろうとしているかを、人が理解してくれることです。試作品を作る前に、このプロセスが欠かせません。これを行えば、シーンや価値がはっきり主張できたはずです。
◆これからは、もっともっと大胆な発想をしてみてください。それを実現するための過程・実践が自分を成長させます。既に、みなさんはバーチャルカンパニーを通じて、実現する方法を学び知恵として身に付けています。
◆「子は宝」と言われますが、皆さんは、企業と従業員の関係をどのように考えますか?一見、親が企業で、子が従業員と考えがちです。マスコミなどでもその様に理解しても仕方がないような報道がされることが多いようです。しかし、私が多くの企業の調査をしてみて、また、私自身が参画している企業で経験してみて、今言えることは「親が従業員で、子が企業」であるということです。従業員の成長なくして企業の成長はありません。従業員の知恵無くして、新規事業はありません。働きながら自ら成長できる人になることが大切です。皆さんは、バーチャルカンパニーを通じて、これができる力を修得したのです。
◆昨今、人を、材料である人「材」ではなく、財産としての人「財」と書くことが多いですね。これも、従業員の成長なくして企業の成長が無いことを反映したものです。しかし、人は、ただ存在するだけの人「在」にもなります。また、害を与える人「罪」にもなります。心がけ次第で、自分を活かすことも殺すことにもなります。
◆大学の経営学部というところは、人財となるための場です。自分を新しい面から成長させたい人は、是非、経営学部に来てください。
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この様に宣言してしまった以上、嘘偽りのない経営学部でありつつけるよう、私も、私達も精進し続ける所存です。あわせて、小学校、中学校、高等学校との校種間連携による学びの意義も、今回を通じて分かってきた。見守る教育とでも言おうか。子が鎹であるのは家族ばかりではない。地域の資産としての子は、地域で育む。子が鎹となり異種の学び舎が連携してこそ、子は初めて地域の資産となるに違いない。地域の教育戦略が根本から変わる必要があり、当然、教員が担う役割も変化するだろう。セクショナリズムでは、駄目だ。肝に銘じたい。

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