2009/12/30
本ブログで「教えない教育」というカテゴリーを設けている。自分自身で分かっているつもりでいたが、ここのところ、私とは分野の異なる方々が「教えない教育」というフレーズを用いて話をされている場に居合わせることが何度かあった。もっとも、私が知らなかっただけで、その方々は私よりもずっと以前から「教えない教育」を唱えられてきているということだ。
2009年を締めくくるにあたり、改めて「『教えない教育』とは何か?」について再考してみることにする。何回かに分け、論を進めていきたい。
鵜飼の「教えない教育」考
私は、かつて「教えない教育について」と題し、私の考え方を情報発信したことがある。もう5年も前になるだろうか。その中の一節に、「『教えない』起業家教育とは」とう項目がありり、抜粋すれば次の通りである。
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私が考える起業家教育では、「変化する状況下にあって、機会を発見し、特異性を生み出し、そしてそれを(事業として)実現する仕組みを実践する能力(コンセプトで言えば、オンリーワンの探索・編集・実行能力)」を目指します。欠かせないのは、この目標にいたるまでの「自らが自主的に掘り下げ、学んでいく姿勢」です。まずは、遊びで経験するようなウキウキ感を抱く環境が必要と考えました。
「教えない教育」は、教材を用意し、それだけで済むという教育ではありません。場・参加者・エデュケーターの協働関係で、教えない教育は展開します。
私は、大学の学部学生を対象とする起業家教育では、①実際のビジネスにつながる小さな生活世界の実体験を積むこと、②多様なつながりを発見でき、無いものから発想できる思考様式になること、③何度でも満足がいくまで挑戦し続ける方法があること、④刺激を受ける場であること、⑤何にもまして支援者がいること、の5点の仕掛けが大切であると考えています。これらの仕掛けに遊びの工夫を盛り込むようにしています。単純化して言えば、ワークショップ(工房、考房)の要素を様々取り入れています。
例えば、①でいえば「事業に関わる場」、②では「即興劇的な情報集約・統合」、「編集ワークシート」、「インタビュー・ゲーム」、③では日めくりカレンダー的な「各種の編集ワークシート」、④では場に参加する者同士の「相互評価」、⑤では個人や集団を対象とする10センチメートル四方の紙を使った「見える化相談」です。
その上で、支援者としてのエデュケーターのあり方が問われます。「問題が出たときに付き合い、必要なときに必要な支援」を行うこと。つまり、社会に向き合うパートナーとして、「先入観を廃し、学生が見えているか」、「調査等に基づく事実認識がしっかりしているか」、「営利、非営利問わず社会での実践者として生きているか」が求められているといえます。エデュケーター自身が、これらの問いに対する活動を実践してはじめて、学生との信頼関係が生まれ、よりよい発展的な関係性が構築できるでしょう。このようなエデュケーターが、「BizMentor」であると考えます。
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