2007/08/27
8月27日(月)
朝から、青空の広がる清々しい天気である。待ち望んだ冬の暖かさが心地よい。このような中、訪問を再開した。
本日の訪問は、Barung Landcareの技術者ジョンに環境再生についての大きな流れを伺った後、彼の案内でマカデミアナッツ農場の敷地内で行われている植林活動について実態を学び、続いて有機野菜栽培農場の現状について学んだ。昼にはグラス・ハウスマウンテンが全て見渡せる展望台でバーベキュー、夕刻はメアリ・ケンクロスパーク前から逆アングルからのグラス・ハウスマウンテンの眺めを楽しんだ。
1.Pacific Plantation
2.Sandy Creek Organic Farm
3.その他マカデミアナッツ農場
Barung Landcareの技術者ジョンから、次のようなことを学んだ。
①Barung Landcareは草の根で始まった環境保全活動の団体が、協同組織の形態をとり法人化したものである。全オーストラリアで4000団体程ある環境保全活動団体の一つである。
②オーストラリアでは市民活動が中心となり環境保全や再生の重要性を訴え、活動が進んできたが、ここ数年来3つの段階の政府(連邦、州、市)がそれぞれ環境保全活動に対する政策を打ち出すようになっている。
③今日訪問するPacific Plantationは、Barung Landareが約3年前から環境再生を一緒に取り組んできたパートナーであり、マカデミアナッツ農場である。この農場は、40年前から営まれており、現在は4から5つの農場が合わさった企業が運営している。加工工場を6つ持ち、海外輸出を行っている。
④Pacific Plantationのプロジェクトは、今までの開発で失われてしまった森を再生させるものであり、これは下流域にあるサンシャイン・コースとへの水供給源の涵養林整備として重要な意味を持っている。ここへの植林は、コミュニティ・ツリー・ファンドからの支援で5から6つの異なる団体が実施に当っている。あわせて200人以上の人々が植林に関わってきた。
1.Pacific Plantation
上記のようにジョンから簡単な導入説明を受けた後、Pacific Plantationの運営企業の社長であるミックから、現場に携わる視点から説明を伺った。ミック自身はこの農場を7年前に購入したそうであるが、マカデミアナッツ農場自体は46年間続いている。
マカデミアナッツの育成方法が変化してきている。特に害虫駆除の方法は、化学肥料を使った農薬ではない方法が採用され始めている。当農場は、350エーカーの広さがあり、収穫可能なマカデミアの木が5万本、成長過程にある木が4000本以上ある。そして5万本で年間300トン、将来的には400トン収穫が可能になると計画している。そして加工工場には、工夫されたナット・クラッキング製法が開発され導入されている。
さて、OBI OBI Creek沿いの植林についてであるが、果たしてどの様な便益があるのだろうか?これにはグリーン・ムーブメントが大きく関わっている。ただし、いずれも資金面の問題がからんでくる。われわれは土地の提供等を通じ、活動を支援している。さて、環境保全と再生のゴールは、農場と市民が共通の目的に向かい一緒に協働することを通じ、お互いに関心を持ち、コミュニケーションを発生させることにある。これにより、地域コミュニティの再生に貢献できることであろう(ジョンがミックを補足して、語った)。
この後、浅い年数の植林の場所から3年前の植林の場所へと移動しながら、植林の実態について認識を深めた。
パイオニアとしての木を牧草地に植える。植えるのは、川岸に接するエリアから。パイオニアは、土地の気候や土の条件に合わせて選ぶが、比較的成長の早いものを充当する。パイオニアが成長し、キャナピができると、第2世代の木が生えてくる。その時期になるとパイオニアを切り倒し、第2世代を成長させる、次に第3世代を成長させる。
森の管理は、どの程度で完了するのか?と学生から質問があった。これは的を射た質問であったようで、質問自体を評価された。むしろ、何時と区切るのが難しいのが森の管理のようだからだ。期限を区切らなければ何千年。ということは永遠に続くということを意味する。他方、第2世代が生えてくるまでとなると5年程度ということになろうという回答であった。
最後に、マレーニに置けるゴルフ場の企画を行政がしていると実態に関心のあった学生は、この植林の一連の流れと逆行するのではないか?との問題提起をし、ミックとジョンの回答を待った。ミックもジョンも色々な立場で考え方が異なるというところで、それぞれの結論については明言を避けた。ここからは私の意見であるが、しかし、今ゴルフ場が計画されている土地は化学肥料等により汚染が進んでいる地域であるとするなら(どうやらそうらしい)、その状態に歯止めをかける手段が考えられてしかるべきであり、それ自体に間違いはない。むしろ、問題は、ゴルフ場か、それとも市民グループが地元紙で提案しているように各種のテーマパークを盛り込んだエリアにするかであろうが、どれを選択してよいかは、色々議論が分かれるし、本討議ゴルフ場が環境被害の原因であると断言するのも、他の管理方法を探れば、安全性の高い方法が見つかるかも知れず、結論を出すのは難しいね・・・。というところであろうか?
2.Sandy Creek Organic Farm
Sandy Creek Organic Farmは5年半前に運営が始まった有機野菜を栽培する農場である。料金前払いのFarm Supporting System (or Customer Supporting System)で運営されている。例えば、1ヶ月分前払いで、指定した有機野菜を栽培してもらい、週1回ダンボールに詰めた野菜を入手する。人によっては、農場にとりに来るし、取りに来るのが難しい場合は、宅配する。
ちなみに、この農場は専従スタッフ3名(社長含む)、パートタイマーが3名である。Barang Landcareのジョンは、ここでパートタイマーとして働いているということである。マレーニには彼が宅配するという。
さて、品目としては、50品目余を計画的に栽培している。半数は種から苗を栽培し植える方法で、残りの半数は直に種を蒔く方法で栽培している。植え付けは毎週計画的に行われており、収穫は週3回、顧客からしてみると毎週1回届くように仕組まれている。この土地の土壌は農場名にあるように砂が多く含まれた水はけの良い土地で、先週の大雨でも収穫作業を中断する必要のないほどであったそうだ。農場を取り囲むようにクリークが流れており、この恩恵を大いに受けた土地であるとのこと。ただし、作付けにあたっては品目を気候に合ったように選定すると同時に、顧客のニーズにあったようにするのも忘れてはいない。また、中には、日本の野菜もあった。例えば、黒田人参。
有機農場を始める前、この土地は、タバコ栽培農場であったらしい。有機栽培をする上で、土壌の改良を行った。日本の久我博士?(比嘉博士?)による微生物を使った土壌改良を実施している。
栽培は、同じ品目が80メートルの長さで植えられており、一つずつの列で異なって品目となっている。土壌に含まれる植物の栄養素を管理するため、連作はせず、お互いに異なる栄養素を必要とする野菜をローテーションさせている。ある野菜が別の野菜の栄養素を土中にもたらす場合もある。
有機栽培であるが故、害虫のコントロールに苦心する。この土地は、周辺を森林で覆われ、害虫の天敵となる鳥等も多く生息していて、自然にコントロールされている。Barang Landcareのジョンは、森林再生の意味は、このように自然なペスト(害虫)コントロールを実現させるためにも非常に重要なことであり、この有機農場は地理的な条件を考えた上で運営されている補足した。
なぜこのような農場を始めたのかとオーナーに尋ねたところ、自分が美味しく、健康になる食べ物を食べたいからとの返答。
さて、興味深い話の中に、流通のタイプと農場経営の持続性に関する話があった。このOrganic Farmは上述のサポートシステムにあるように、消費者と生産者がダイレクトに繋がっている。それであるからこそ経営を続けられていると強調していた。そして、次のように解説を加えた。仮に生産者と消費者の間に、消費者から見て小売店、次に卸売り店、そして次に生産者があるような2段階のステップがあったとしよう。小売業者が競争の結果、安売りにでるとする。仕入れ価格の引き下げを小売側は卸売り側にする。すると、当然、卸売り側は、生産者に仕入れ価格の引き下げを要求してくる。この繰り返しで安くなってしまう。そうすると、生活と農場を十分に維持するために、大量栽培方式を取らざるを得ず、有機栽培では難しくなると同時に、さらに仕入れ価格の引き下げ圧力で終いには農場の維持が難しくなるだろう。
3.その他マカデミアナッツ農場
比較の意味で、異なるマカデミアナッツ農場を訪問した。質問と言うより、見学がしゅであり、どのような種類のナッツを栽培しているかを学習した。ここでは、マカデミアナッツを試食し(いったもの、いったものに塩を振りかけたもの)て味を堪能し、ナッツを包む殻(外皮)は堆肥化したものを栄養素の一つとして木に与えることを知った。見学中、ワラビーを見ることができた。どうやら本日早朝には、敷地内のユーカリの木にコアラがいたらしい。
この他、ハワイのマカダミアナッツとの関係について知ることができた。1960年代初頭に、ハワイから来た人物がマカダミアを持ち帰り、チョコレートをあわせ販売するようになったらしい。今では、マカダミアというとハワイと思っている人が多いが、元々はオーストラリアで自生していたものである。