アントレプレナーシップ・エデュケーター道場

お知らせ

2016/10/24

地域活性学会ニューズレター・リレーメッセージに投稿

「地域活性学会ニュースレター」のNo.175(2016年10月24日)号にリレーメッセージとして下記の内容を投稿しました。足跡として記します。
市民活動支援制度(通称:1%支援制度)~市民税1%の活用を市民に委ねる地域~
(鵜飼宏成 愛知学院大学 経営学部教授・地域連携センター所長)
1.市民活動支援制度とは
市民活動支援制度とは、市民税の1%相当を市民自らの投票により市民活動への分配を決める制度である(注1)。議会が税金の使い道を決めることが一般的とされている中、「市民が直接投票によって社会的な課題を解決する市民活動を資金面で応援する動き」が始まっていることに注目したい。
(注1)条例等で定められた年齢以上の市民は支援金を持ち、市民活動団体への支援金の算出の基礎となる。この支援金の額は個人市民税額の1%相当額を対象年齢の市民数で割り戻して算出したもの。
2.先行する自治体
市川市が平成17年(2005年)度にわが国で最初に同支援制度を導入して以後、2番手グループとして平成21年(2009年)度に一宮市、恵庭市、奥州市、大分市が導入し、平成28年(2016)度の現在は6市で運用されている(大分市、佐賀市、和泉市、生駒市、一宮市、八千代市)。全国1,741の自治体(市は791)から比較すると僅かに留まっているが、税金の使い道を市民の委ねるという大英断を下した先行自治体には敬意を表したい。市民を信頼して、「自分の地元をどうしていくのか、誰がどのように関わっていくのかを問い直す」機会を提供しているからだ。
3.支援体制の充実が地域力を確実に高める
さて、筆者は一宮市で初回から審査会委員を務め、毎年度70~80件の市民活動団体を審査している(注2)。審査会の役割は、提案された事業を「①公金負担の妥当性、②事業内容の公益性、③事業内容の妥当性、④費用の妥当性」の4視点から確認し、18歳以上の市民が選択する際に参考としやすい情報とすることだ。加えて、事業終了後に適切に遂行されたか、各団体が実施事業を振り返り課題を抽出し、克服方法を検討しているかどうかを審査する。約8年にわたる推移を見守ってきて、市民活動支援センターの相談機能の充実もあり、市民活動団体の課題解決力や事業の提案力が高まってきたことを実感している。
(注2)http://www.city.ichinomiya.aichi.jp/kurashi/chiiki/1010093/1015840.html
4.市民が地域づくり活動にかかわるきっかけとするために
しかし課題もある。制度の本質から言えば、市民がまちづくりに参加する貴重な機会になるはずだ。残念なことに、お金で支援(投票)したらその団体の活動に参加していくのではないかと期待していたが、大きな動きになっていない。私見であるが、市民側の意識醸成だけではなく、団体側の受け入れ態勢を見直すきっかけと考えるべきだ。また、地域の課題は、高校年代の学び方として期待されているアクティブラーディングの題材だ。市民活動の充実と層の厚さが次世代の育成につながる時代となっている。

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