アントレプレナーシップ・エデュケーター道場

お知らせ

2016/01/10

東海三県地域おこし協力隊フォローアップ研修とコミュニティビジネス発展段階モデル

2016年1月22日、三重県熊野市にて開催される東海三県地域おこし協力隊フォローアップ研修の2日目に分科会をリードすることになった。リソースパーソンに、三重県多気町に家族で移住し活躍されている、西井 勢津子氏(株式会社地域資源バンクNIU代表取締役)をお招きし、「地域に[ビジネスの生態系]をつくろう~起業の種のつなぎ方~」と題しての3時間だ。分科会の呼び掛け文に、次のような一節を書かせていただいた。<アイデアは「想い醸成期」「共同学習期」「社会実験期」を辿ってカタチになる。地域での自活の鍵をビジネス生態系の視点から考える。>西井勢津子さんという先人に学び、話し合い、自分の身に置き換えて考え内省する時間とします。
Photo西井さんと私は、特定非営利活動法人起業支援ネットで、関戸美恵子さん(故人)より学びと刺激を得た。その起業支援ネットが基本に置いているのが、コミュニティーへの影響度(縦軸)と個人と事業の成長(横軸)の間でコミュニティビジネスの発展段階を考えるモデルだ(図参照)。フォローアップ研修のお話をいただき、地域おこし協力隊のロールモデルの一人になるだろうと考えたのが西井さん。フェースブックで活躍を知るにとどまったこの数年間だったが、乗り越える苦労はなくなっていないだろうが、西井さんは確実に周りの方々との協働で進化している様子であった。お願いしたところ、快くリソースパーソンとしての参加を引き受けていただけた。その西井さん、自身の成長を計る上で基本に置き、これかがあるから時間がかかっても焦らないとするのが、件の「コミュニティビジネス発展段階モデル」だという。私自身も問題提起者として、この発展段階モデルで受講する方々にフックをかけようと考えていたところであった。
関戸さんから得た学びは、日々の生活に根付いている。そして、自信となっている。68歳で逝ってしまった関戸さん。「ここまで全力で走ってやってきたんだから、後は頼んだよ!」との声がいまにも聞こえてきそうだ。大義を持って全力で駆け抜ける。その背中を追い続けたい。
当日、冒頭30分を私からの問題提起する構成を考えています。頭の整理として集めた実践事例から次のような気づきを得た。一部の概要部分のみ備忘として記す。
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シナリオ案
Ⅰ:ビジョニング(30分)・・・鵜飼
 1自分の成長を、コミュニティビジネス発展段階で考える(横軸)
 2将来の生業を、地域におけるビジネス生態系で考える(縦軸/事業展開期に相当)
 3西井勢津子さんの紹介
Ⅱ:先行者に学ぶ現実(60分)・・・西井さん
Ⅲ:参加者とのディスカッション(質疑応答含む)(45分)・・・鵜飼リード
Ⅳ:振り返り&示唆(45分)・・・参加者全員
 1問題提起者による総括
 2西井勢津子さん感想
 3ビジネスモデル・キャンバスを用いた自己発見(参加者個人ワーク)
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Ⅰ ビジョニング
1.問題提起
 思い立ったが吉日という諺がある。何かをしようという気持ちになったら、その日が吉日と思ってすぐに始めるのがよい。との意だ。では、起業ではどうか?特に、フランチャイジーとして開業するのではなく、自らの力で始める場合は?すぐに始めることができれば問題はないが、果たして・・・。
NPO法人起業支援ネットでは、成功したコミュニティビジネス(地域の問題や社会の問題をビジネスの手法を使って解決する事業)を分析した。そこから、ほとんどの起業家はいきなり事業を始めるのではなく、本格的に始める(上記の事業展開期)前に、3つの段階を経ていることが分かった。想い醸成期、共同学習期、社会実験期であり、この間に、起業家は、価値ある(社会に受け入れられる)事業にするためのトライ&エラーを繰り返しビジネスの質を高めていた。
もう一つ新規事業の立ち上げを左右する大きな要因がある。それは、ビジネス生態系(エコシステム)ともいうべき、起業を応援する環境だ。この環境は、新しいことを応援したり、成功している人がいるなどの風土であり、それを支える人と人の関係だ。
田舎(中山間地域等)では、都市とは違い、自然界のエコシステムは多様に存在していたとしても、社会や仕事を成り立たせる人間界のエコシステムは弱体化しているか、既に消失してしまっている可能性が高い。だから、新しいことを始めることは簡単ではなく、都市で起業するのとは異なる苦労が伴ってくる。ビジネス生態系(エコシステム)を応援しあう関係と考え、小さくとも仕事面で補完関係を結ぶことのできるビジネスを創造することが必須で、その際、ビジョンあるいは未来をデザインすることが地域の人の間での共通言語となる場合が多い。
中山間地域でビジネスの手法で「まちづくり」「地域再生」を実践し、うまくいっている事例を紹介する中から、ビジネス生態系(エコシステム)とコミュニティビジネス発展段階ごとの特徴を確認したい。
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2.事業展開期にある一般社団法人ノオト(兵庫県)
 ノオトの活動を一文で表すと「歴史地区の創造という地域再生戦略」
 人口減少、少子高齢化が進行する歴史地区(城下町、宿場町、集落等)を、地域の空き家と歴史文化を活かして再生する。
 各地の成功例を振り返ると、次のような構造が見えてきたという
●空家を活用することで、新たな事業の担い手としてUIターン者を呼び込む。(業種を決めて情報発信、それに向けて応募がある。その中から選定。)
●小さくとも産業クラスターが形成されてきた(相互に補完しあう関係が生じてきた)・・・空家の修復産業、観光産業、食文化産業、クラフト産業・・・篠山、集落丸山等のノオトが手掛けてきた地域は「観光」から入って移住が増える地域再生を行ってきたが、移住という切り口で入って結果的に観光に結びついているところもある。これは、地域の特性に応じて異なってくる。
●何もしなければ限界集落となり消滅したかもしれない地域が再生できた要因は、インクが関わるビークルの役割が大きい。ここでいうビークルとは、変化を誘発するような役割を果たすプレイヤー。ノオト代表の金野氏によれば、その「まちづくりビークルの要件」は次の5つで、まちづくりビークルは、プランニングの段階で「地域(コミュニティ)の未来を描く」。
 ① 地域(=コミュニティ)の有志たちが、
 ② 乗り合わせるビークル(株式会社、NPO等)を作って、
 ③ 地域に認知されながら、
 ④ 自分たちの責任で事業を展開する。
 ⑤ そのビークルには外部者が乗っているほうがよい。
《考察》
イ)ノオトは歴史地区の創造としての地域再生戦略の(大手資本とは異なる)ローカル主体のビジネスモデルを構築した。その特徴は、勝利の方程式にあるように、地域のリソースとプレイヤーに焦点を当てた〔空間+食文化+生活文化〕一体的開発戦略。
ロ)自然発生的にはこの一体的開発とはならなかったという事実に注目すべきだ。よって、より重要なのは、「まちづくりビークル」の存在とその形成に至るプロセスだ。ノオトはビークルの提案者であり、外部者としての搭乗者である。
ハ)事業展開期にあるノオトが創造したのは中山間地域のビジネス生態系(エコシステム)に他ならない。ノオト金野氏による図は、地域おこし協力隊を終えた方々が地域で「はたらく」あり方を示している。皆さんは(地域おこし協力隊の現役の方々は)、ビークルか?プレイヤーか?そして、自分たちのリソース(発見した価値ある資源)は何か?孤立していては活かされないし、地域を活かせない。つながりの中で、補完関係できる「皆さんのしごと」とは何か?自分たちの地域の現状は?そして、自分ができること、やりたいこと、求められていることは?
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3.共同学習期にある一般社団法人インク(岐阜県)
 世界文化遺産・美濃和紙の里である岐阜県美濃市蕨地区を拠点に活動するインク。このインクの活動を一文で表すと「農山村の人材育成と地域に貢献する里山インキュベーター」。
《考察》
イ)ノオトの用語を借りれば、インクは「まちづくりビークル」だ。その一方で、インクは社会的事業を担うコミュニティビジネネスの起業であることも事実だ。
ロ)着想から数えれば2年を超えるインクは、想い醸成期での構想が共同学習期の2年目で通用しないことがわかり、通用しない要因が地元からの信頼の不足であることが判明し、信頼関係構築のプロジェクトを先行して実施するアクションプランを考えた(あくまでもこれは事後的に判断できることであるが・・・)。
ハ)インク顧問の嵯峨教授が示す新事業構想とアプローチ方法は本当に通用するのか?3年目も資金を必要としないプログラムでの共同学習が続くだろう。
ニ)インクが共同学習期で辿り着いた考え「多様な起業があって良い」は、現実に即した結論だ。起業リスクの大小はあるものの、事業化に向けてはいずれの起業でも社会実験を避けてはいけない。
ホ)社会実験期とは具体的に何か?地域資源リソースとして何を見出したのか?そこに至るまでにどのようなマインドの変化があったか?そして、必要となるスキルは?世帯としての収支は?
ヘ)名古屋から多気町に移住し起業した「西井勢津子さん」より、<社会実験期にある㈱地域資源バンクNIU>の実際について伺おう。
Ⅱ 先行者に学ぶ現実(60分)~社会実験期にある㈱地域資源バンクNIU
Ⅲ 参加者とのディスカッション(質疑応答含む)(45分~60分)
Ⅳ 振り返り&示唆(45分~30分)
 1問題提起者による総括
 2ビジネスモデル・キャンバスを用いた自己発見(参加者個人ワーク)

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